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【知恵の森】日本語最大のミステリーを解く!『ん―日本語最後の謎に挑む (新潮新書) 』山口 謠司 (著)

2010-10-22 08:51


今日の一冊は、あまり肩ひじ張らず、読むことができる新書。フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学び、現在は国語学者である著者が日本語最大の謎、『ん』の誕生、歴史の謎をまとめた一冊。

タイトルが「ん」一文字で、標記しにくく人を食ったような印象を与えるが、内容はいたってまとも。
世界的に見ても「ん」ではじまる言葉はほとんどないらしい。「ん」はちょっと特別な音なのだ。歴史をひもとけば、古事記をはじめ上代の文書には「ん」と読む仮名が一度も出てこないらしい。

ありなむ→ありなん
知りなむ→知んなむ
のように、口語として使われたのが最初だそうだ。次第に大衆に普及して「ん」は平安時代に表記の必要性が感じられるようになり、音をあらわすための文字として成立した。清少納言は枕草子で「いでんずる」などという言葉づかいは汚い表現だと批判した。「ん」は日本語のシステムのはみだし者として始まった。

その他にも文献にカタカナの「ン」が現れるのはようやく11世紀になってから。かの空海は「吽(うん)」の字に即して「ン」の音がもつ宇宙論的意味を説いていた、といった話も出てくる。

「ん」たった一文字から日本語の情緒とシステムをつなぎリズムを与えることを教えてくれる幅広い国語のお話です。

えたいのしれないイメージがつきまとっていた「ん」が、本書を読むとちょっぴり身近なものに感じらます。ぜひ読んでみてください。