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【知恵の森】『イチローのバットがなくなる日―「アオダモ」を巡る渾身のルポルタージュ』長谷川晶一

2011-02-10 09:37


これがアオダモの木か!?大きく育てよ。

最近、アオダモの木はよく庭に植えられます。イチロー選手の活躍でそれがバットの材料になっているという知識はあります。でも庭に植えるアオダモの木はたいがいがヒョロヒョロの木。これがバットになるとはなかなか想像がつきません。


本書は、メジャーリーグで10年連続200本安打を達成した、世界のイチロー。そのイチローのバットの材料であるアオダモが今絶滅の危機にあることを追ったルポルタージュ。

著者は、早稲田大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。主な著書に、フジテレビ連続ドラマ化された『ダンス・ラブ☆グランプリ』や、野球にかける女子高生たちの物語『ワールド・ベースボール・ガールス』などがある長谷川晶一氏。


始まりは、2008年、イチローのバットを命がけで守り続けてきた2人の老人たちが、相次いでこの世を去った……。
2人は「イチロー選手のために」とさまざまな苦境の中でアオダモという木を守り続けた。しかし、その彼らもついにこの世を去るときがきた。そして、彼らの死に歩調を合わせるかのように、アオダモを取り巻く環境は激変していく。

アオダモがバットになるためには70年。そのしなり、粘りに優れたアオダモ材がイチローのバットの秘密。他の外国産材に比べて格段に折れにくく飛距離がでるバットが出来上がる。かつて一流選手の多くがアオダモ製バットにこだわり、あの落合博満(現・中日ドラゴンズ監督)も、造林現場に足を運びアオダモを自分の目で選んでいたという。


その他にも「かっとばし!!」と名づけられたバット型の箸はご存知ですか?

これは、北海道の山林で育ったアオダモという木は、北海道の職人たちの手で刈りだされた後、岐阜をはじめとするバット職人の手に渡る。
そして、バットとして選手たちが使った後、折れたバットは回収されて福井に届けられる。福井県小浜市は塗箸の産地だ。この地で折れたバットはお箸に生まれ変わる。
そして、再び全国の店頭にアオダモは行き渡る。この箸の売り上げの一部はアオダモ植樹の基金となり、そして再び、アオダモは北海道の大地に還る。

華やかなメジャーリーグや偉大なイチローの記録の陰で、目立たないがその陰にはさまざまなストーリーがある。バット作りに人生をかけた人たち。アオダモを取り巻く環境の変化。野球の見方が変わるかもしれないそんな一冊です。ぜひ読んでみてください。



●目次
序章 「どうして、こんなことに…」ー2010年夏
第1章 アオダモは死なずー2006年早春・その1
第2章 アオダモの再生ー2006年早春・その2
第3章 アオダモを取り巻く異変ー2008年夏
第4章 そして、三度目の北帰行ー2010年夏・その1
第5章 あの日の若木が…ー2010年夏・その2
第6章 機械がバットを作るー2010年夏・その3
第7章 いつか来た道ー2010年夏・その4
第8章 「三度目の旅」を終えてーアオダモの今後
終章 雨の神宮球場にてー名もなきヒーローの奮闘